新疆ウィグル自治区は中国の行政面積の16.7%を占める広大な土地である。チベット同様、共産中国の侵攻によって中国に編入されたかつての東トルキスタンであり、イスラム教圏の東の果てにも当たる。
ウィグルに元々住む多くの住民は、それ以後入ってきた漢族とは違い、イスラム教徒であり、2001年以降のイスラム過激派国際テロの潮流を考えれば、中国の隠れたアキレス腱の一つといってもいいかもしれない。
さて、気になる話を見つけた。4月12日付けのNewsweekの記事で、Jonathan
メッカへの巡礼、つまりハッジ(Hajj)を果たしたウィグル人は、以前より、よりイスラム的な、そして、より民族的なものの見方や考え方を獲得して帰ってくるのだという。この人々はハッジ階級を形成し、ウィグル民族の中で、一種の尊敬をもって見られている、というのだ。
Ansfield氏だけでなくSimon
中国当局はウィグルのハッジ階級の出現を憂慮し、2004年からは政府の公式のハッジ・ツアーのみに出国を許可するようになった。つまり、共産党の監視付きツアーである。しかも参加者は$5000のツアー代金を支払わなければならず、その上、出国のための徹底した身元調査もしなければならないという、まあ、ほとんどのウィグル人にハッジをさせない手段に出たのだ。そして今年、政府はウィグル人が政府から給料を受け取れない様にした。実はそれ以前から、政府に雇用されていた人にはラマダンの月の断食(イスラム教義の一つ)を禁止し、モスクなどに寄付をする事もやめるよう働きかけていた。この政策で、2007年には3400人のみハッジが出来た。このハッジ帰還者には様々な嫌がらせが当局から行われているという。
ハッジをご覧になった事はあるだろうか?もちろんあのメッカの大聖堂に入れるのはイスラム教徒だけだから、イスラム教徒でない私は、現物にはお目にかかった事はない。が、2、3年ほど前、CNNが、イスラム過激派の事ばかりを批判していないでイスラムを見てみようという事で、このハッジの大中継を何日かに渡って行った事がある。イスラム教徒でなくテレビを通してでも壮大な行事で、思わず「へーー」となるほどである。ましてやイスラム教徒に取っては一生に一度あるかないかの一大事である。アラビア半島の近くに住んでいるならともかく、貧しい中央アジアや中国から来るのは本当に大変なのだ。稀にパキスタン辺りから歩いて(!)来る強者もいるが。イスラム教徒である限り、成さねばならぬ5大教義の一つだ。日本人には理解出来ないだろうが、もう、彼らに取っては人生のすべてを掛けた一代イベントなのである。20世紀以降、交通機関の発達で、中世頃ほど大変でないかもしれないが、飛行機代を出すのに家を担保に借金する、、、なんて話があっても不思議でないほど、彼らに取っては真剣な事なのだ。そしてハッジをしないで一生を終わるのはハッジ、、、じゃない、「恥」に感じられるらしい(下手なしゃれ、失礼しました)。
が、ウィグル人達は長い間蚊帳の外に置かれてきた。中国共産党支配下で外国旅行は長い間出来なかった。金銭的にも難しかった。だから「恥」を感じてはいた。が、仕方なかった。しかし、中国の経済発展のおかげで、一部とは言え、それが出来る人たちが生まれ、彼らは喜んでハッジに出かけたのである。でも、「毛沢東が築いてきた共産党システム」が神の役割を果たす中国において、「共産党というモスク」以外に忠誠心を向ける対象があっては、共産党の支配を正当化できない。「共産党はそういうが、アラーはそうは言わない」という比較対象があるのは、精神コントロールによって一党独裁に疑念を持たせない政策の効果を半減させてしまう。共産党が一番、それ以上はない、その世界を守るのが中国共産党が生き残る唯一の手段なので、中国では宗教は共産党(彼らは「国」というかもしれないが)の敵である。ライバルは消せ!と行きたいが、いかんせん、実態がないものなので、イスラム自体は逮捕できない。が、信者は逮捕出来る。
中国に取ってイスラムがより厄介なのは、イスラムには「カリファイト(Caliphate)」という思想があることだ。これはイスラムそのものを国家と考えるイスラム政治体のモデルである。カリファ(Caliph)という政治指導者(予言者モハメドをイメージしている)の下でのコミュニティーを形成し、現在ある国家の枠を超え、イスラムを共通の価値基盤として、世界全体でイスラムという国家になる、という思想である。有る意味で、かつての国際共産主義的な考え方だが、イスラムの場合、予言者モハメドがメディナの街を中心にこのカリファイトを開いたと考えている。そして、その時代が「完璧な理想が実現した時代」と捉えており、この時代に返る事が、有る意味、イスラム教徒全体の夢である。7世紀から続く思想が、国家として60年程度の中国と喧嘩をしているようなものである。中国は弾圧をもってこれに対応しているが、暴力を使えば使うほど、カリファイトを実現して差別や弾圧に怯えないでいい生活がしたいと思うウィグル族が増えても不思議ではない。
イスラムは広い世界である。そして、同時に危険な世界でもある。ウィグルハッジ階級がハッジの際に他の国のイスラム教徒に情報をもたらす事も考えれる。現に何人かはハッジを機会に亡命したらしい。徐々に、イスラム世界は中国のイスラム同胞の苦難を知り始めている。が、このウィグル人を助けるのは穏健なイスラム教徒だろうか?それてとも過激なイスラム教徒であろうか?
チベットに目を奪われてしまったが、実は3−4月のチベット暴動の影で、ウィグルでも暴動が起きている。内側に不満を充満させ、外からの災いを招き寄せる。中国のウィグル政策は吉か凶か?
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参考
ウィキペディア 「中国行政区分の面積一覧」
http://ja.wikipedia.org/wiki/中国行政区分の面積一覧
ウィキペディア 「東トルキスタン共和国」
http://ja.wikipedia.org/wiki/東トルキスタン共和国
Wikipedia,
http://en.wikipedia.org/wiki/Califate
Jonathan
http://www.newsweek.com/id/131705
Simon
http://www.time.com/time/world/article/0,8599,1731474,00.html
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by tna6310147
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